利他的交渉とその裏にある本音
相手が喜んで自分も得するって、そんなうまい話ある?
まず「相手が喜び、自分も得する交渉を目指す」って話なんですけど、それって一見するとすごくいい話に聞こえるんですよね。ただ、それって本当に成立するのかってところを疑ってみる必要があると思うんです。要は、交渉ってのは基本的に利害がぶつかる場なんですよ。お互いに「得をしたい」という前提で来てるわけで、そこに「両方がハッピー」っていう理想論を持ち込むと、結局どっちつかずの中途半端な落とし所に行く可能性が高い。
ただし、それをあえて狙う戦略というのは理解できるんですよ。長期的な信頼関係を築くためには、一回一回の勝ち負けじゃなくて、トータルでどう得をするかって視点が必要ですから。だから「利他的に見える交渉」というのは、実は長期的な自己利益を確保するための手段だったりするんですよね。
弁護士の話はむしろ逆の教訓になる
で、弁護士が勝訴してもクライアントの満足度が低いって話なんですけど、それって要は「勝ったけど手間がかかった」とか「思ってたよりお金かかった」とか、「感情的にはすっきりしなかった」みたいな話なんですよね。そういうのって交渉じゃなくて、クライアントとの期待値調整の問題だったりするわけです。
つまり、交渉そのものよりも、事前に「どこをゴールにするか」をちゃんと共有しておかないと、どれだけ良い結果が出ても不満が残るってことです。だから交渉って、相手との会話よりもむしろ、自分の側との内部調整、つまり「何を目指すか」「どこまで譲れるか」の確認のほうが重要だったりするんですよね。
スピード決着は本当にお得なのか?
交渉の早期決着がもたらす\”損\”の可能性
「スピード決着でストレスが減って次の利益を追求できる」って言うんですけど、これも一理あるけど一理ない話なんですよ。要は、早く終わらせるってことは、情報収集も交渉もそこそこにして「まあ、このへんで手を打つか」って妥協することになる場合が多い。
それが結果的に「相手のほうが得してた」ってパターンになることもあるわけです。だから、早く終わらせるために「本当はもっと取れた利益を見逃してる」ってことに気づいてない人って結構いるんですよね。時間をかけることが常に悪ではないっていう視点は、もうちょっと意識したほうがいいと思います。
数円単位の攻防を笑う人って、たいてい失敗してる
あと、「数円単位にこだわるより次の仕事を」って話も、ちょっと頭良さげに聞こえるんですけど、実際の現場では、そういう「細かいとこまでやる人」の方が信頼されてたりするんですよ。長期的な関係を築くって言ってるのに、細かい調整をおろそかにしてどうやって信頼関係築くの?って話で。
で、こういう「効率厨」みたいな人がよくやる失敗が、「大事なところを見逃して、信頼を失う」ってやつなんですよね。細かいところをちゃんとやることで、「この人、ちゃんとしてるな」って思われて、次の仕事が来るってパターンもあるわけですから。だから、スピードと信頼って、実はトレードオフの関係にあることも多いです。
期待値を超える=いい人ではない
人は損した記憶のほうが強く残る
「相手の期待を超える結果を提供する」っていうのも、すごくいい話っぽいんですけど、これもね、過剰なサービスってあとで自分の首を締めることになりがちなんですよ。なぜかって言うと、人間って「得した記憶」よりも「損した記憶」の方が強く残る生き物なんですよ。
だから、たとえば今回めちゃくちゃ頑張って相手の期待を超えたとしても、次にちょっとでも期待を下回ると、「あれ?この前の方が良かったのに」って不満が出るんですよね。で、それをまた超えようとすると、コストがどんどん積み上がっていく。結果的に、「期待値インフレ」っていう罠にハマるわけです。
「裏切らない人」は「超えない人」
逆に、毎回ちょっと期待より下ぐらいで安定してる人の方が、「あの人は安定してる」とか「裏切らない人」って評価されるんですよね。つまり、短期的な驚きを与えるよりも、長期的な安心感を与えたほうが、ビジネスとしては有利なんですよ。
だから「期待を超える」っていうのは、場合によっては「次回の交渉を難しくするだけの地雷」でもあるんですよ。毎回期待値を上げてしまうと、どこかで必ず「落ちる瞬間」が来る。で、その時に評価がガタ落ちする。そうならないように、ほどほどにしておくっていうのも一つの交渉術なんじゃないかと思います。
長期的な関係性と利他の精神の罠
長期的な利益って、計算できるんですか?
「目先の利益ではなく長期的な利益を」とか、「利他の精神で信頼を得る」とか、すごく理想的な話ではあるんですけど、これって前提として「長期的な関係性が続く」ってことが必要なんですよね。でも現実問題として、仕事の現場って常に人も組織も変わっていくし、経済状況も変わるわけで、「長期的」って何年なのかも不明確なまま語られることが多い。
つまり、「長期的に得をする」っていう前提が崩れた瞬間に、すべての理想が意味を失うわけです。それに「利他的にふるまった結果、相手が調子に乗った」ってパターンも多い。利他的にふるまうには、「相手がそれに応える人間かどうか」の見極めが前提として必要なんですよ。
返報性の法則は、環境が保証してくれるものではない
「返報性の法則」って言うけど、あれも一種の期待ですよね。「こっちが譲ったんだから、次はそっちが譲るだろう」っていう期待。でも、それって相手のモラルや文化に依存してるわけで、期待したけど裏切られるってことも当然ある。
だから、利他的にふるまう場合も、「裏切られたらどうするか」っていうリスクマネジメントは絶対に必要なんですよ。「信頼される人間になることが利益につながる」っていうロジック自体は正しいけど、それが通用しない場面でも、同じ態度でいるのはただのカモになっちゃうわけです。
交渉の裏には「準備」がすべて
準備が8割、交渉は2割
交渉って、話し合いの中で何かを決めることだと思われがちなんですけど、実は「話す前にどれだけ準備してたか」で結果の8割ぐらい決まってたりします。つまり、相手の欲しがってるもの、自分の限界ライン、それに代替案――この3つをちゃんと揃えておけば、あとは流れで何とかなる。
で、この本にも出てくる「バトナ」つまり「交渉が決裂したときの代替案」の話、これが本当に重要なんですよ。代替案があるだけで、精神的に余裕ができるし、強気でいられる。逆に言うと、代替案がないと、相手に足元見られるんですよね。「この人、他に選択肢ないんだな」って思われた時点で、交渉の主導権は失われる。
「調べる力」は交渉力に直結する
結局のところ、交渉って「情報戦」なんですよ。相手の会社の状況とか、決裁権を持ってる人は誰かとか、過去の取引履歴とか、そういうのを事前にちゃんと調べておけば、「この条件なら飲むだろうな」ってのが見えてくる。逆にそれを知らずに交渉に臨むってのは、地図なしで登山するようなもので、基本的に失敗する。
これって別にビジネスだけじゃなくて、日常生活でも一緒なんですよね。たとえば「家賃の値下げ交渉」とかでも、「周辺相場」とか「空室率」とか調べてから行くのと、何も知らずに「下げてください」って言うのとでは、相手の対応も全然違うんです。
感謝と譲歩のタイミングがキモ
小さな譲歩が生む「貸し」の力
この本で出てくる「小さな譲歩を与えると、相手も譲歩しやすくなる」ってのは、ある種の心理戦なんですよ。要は「この人は敵じゃないですよ」というアピールなんですけど、ただこれって「やりすぎると舐められる」というリスクもある。
重要なのは、譲歩の「タイミング」と「量」。小さな譲歩を最初にしておくことで、「自分は柔軟ですよ」と見せる。それによって相手が「じゃあ自分も…」ってなれば理想ですけど、相手が図に乗って「もっといけるな」って思ったら逆効果。だから譲歩って「貸しを作る」ための行為だと理解して、それを交渉のカードとしてキープしておくことが重要なんですよね。
感謝の言葉のコスパは異常に高い
交渉が終わったあとに「感謝を伝える」って話もありますけど、これは本当にコスパ最強のテクニックです。別にお金もかからないし、時間もかからない。でもこれをやるだけで、相手の印象がガラッと変わる。「この人はちゃんとした人だな」って思われる。
で、そういう印象って、次の交渉でボディブローのように効いてくるんですよ。「前回、ちゃんとお礼言ってくれた人」って記憶があるだけで、「じゃあ今回は少し譲ってもいいかな」って気持ちになる。だから、感謝の言葉って、短期的な戦略というより「次につながる投資」みたいなもんなんですよね。
直感よりもデータ、感情よりも論理
感情で動いたら、だいたい損をする
「感情や直感に頼らないで、データで交渉しろ」って話も出てきますけど、これはめちゃくちゃ大事です。交渉って、ある意味で「演技」の場でもあるんですよ。ムカついた顔をしてても、心の中では冷静に「これは計算上、妥当か?」って考えてなきゃいけない。
で、感情を表に出す人って、だいたい交渉で損してるんですよ。「なんか熱くなってる人」ってのは、相手にとって「揺さぶりやすい対象」になる。逆に、ずっと淡々としてて、何考えてるかわからない人の方が、相手にプレッシャーを与える。だから「冷静さ」は交渉における一種の武器なんですよね。
論理の鎧を着ると、交渉がラクになる
直感ってのは「経験の積み重ね」でできてる部分もあるんですけど、それでも再現性は低いんですよ。論理ってのは、「なぜこう考えるか」を説明できるから、相手も納得しやすいし、自分でもブレにくい。
つまり「交渉がうまい人」ってのは、「論理で自分を守れる人」でもあるんですよ。相手に何を言われても、「それはこういう理由で受け入れられません」と言える。感情で断ると角が立つけど、論理で断ると「まあ、仕方ないか」と思わせられる。要は、論理ってのは「断る技術」としても有効なんです。
短期と長期をどうバランス取るか
目先の損が、本当に損とは限らない
「今回の交渉では譲って、長期的な信頼を得る」って話、これは理想論ではあるけど、ちゃんと見極めが必要なんですよ。要は「今回の譲歩が、将来どう返ってくるのか?」ってシミュレーションをちゃんとやってるかどうか。なんとなく「いい人に思われたい」とか「関係を壊したくない」って理由で譲ってると、ただ損するだけの人になる。
だから、「今、損してもOK」って言えるのは、「この損が将来の利益につながる明確な根拠がある場合」だけなんですよね。たとえば、継続案件がすでに決まってるとか、紹介が約束されてるとか、そういう具体的な話があるならいいんですけど、「期待値だけ」で譲るのはリスクが高い。
「譲歩を引き出す技術」は、空気を読む力
で、逆に相手から譲歩を引き出すってのも、かなりの技術が必要なんですよ。特に「空気を読む力」がものを言う。「このタイミングなら譲るだろうな」とか「今は引く時だな」とか、そういう判断は、経験と観察眼に基づいてる。
そのためには、交渉の途中でも「相手の呼吸を読む」意識が必要で、「言葉の裏に何があるか」「なぜ今それを言うのか」ってのを考え続けることが重要なんです。結局、交渉ってのは「情報戦」であり「心理戦」なんですよ。数字だけじゃなく、相手の性格やクセ、組織の背景まで読み込めるかどうかで勝負が決まる。
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